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1. ほしかった物
過去投稿の (16) 音楽再生回路でコンデンサのありがたさを知る ではバイパスコンデンサのフィルター効果に感激した。ぜひその働きを目で見たいと思ったのだが、オシロスコープを持っておらず、スピーカーが発する音から雑音が消えたことでキレイにフィルタリングされた電気の流れを想像することしかできなかった。
オシロがほしい!
でも高い…
(1) 選定条件
かつて組み込みエンジニアだった頃には、職場で 1本 10万円以上もするプローブを付けた数百万円のロジアナやオシロを使っていたが、いざ自分のお小遣いで買おうとすると手が出ない。
そんなに高機能な物はいらないと絞って探しても、数万円は軽く飛んでしまう。
そこで割り切った。
・多チャンネルはいらない。(プローブ 1本繋げればよい)
・画面はスマホぐらい小さくてもよい。
・Made in Japanに拘らない。
・予算は 1万円まで。
(2) 買う物を決定
3,000円弱の組み立てキットから 1万円すれすれのハンディタイプまで数機種を比較した結果、これに決めた。
中国の JYE Tech Ltd. なるメーカー製の DSO-112A なる製品だ。
ハンディタイプ 1チャネルのオシロスコープで実売価格は 7,000円ほど。
ネット上の口コミを見てもそれほど酷評されていなかったので、ダメなら諦める覚悟で購入してみた。
https://akizukidenshi.com/goodsaffix/UserManual_112A.pdf
2. 開封
第一印象は 「おまえ、ちっこいなぁ」 だった。
外箱ですら iPhone5と比較してもこの大きさだ。
手のひらサイズのテスターと比較してもこの通りの小ささ。
中身を取り出すとこんな感じ。
USBのコネクタが巨大に見えるくらいに小さいのだ。
内容物は以下の通り。
1) オシロ本体
2) プローブ 3種類
3) 充電&ファームウェアダウンロード用USBケーブル
4) 簡易取扱説明書
3. 使用前準備
(1) バッテリーの充電スイッチON
取説では
「購入直後は本体上部左側の穴の中にあるスイッチを右から左に動かせ」
と書いてあるのだが、ピンを差し込んでスイッチを動かそうとしても、それに触れている感触がまったくない…
とりあえずパネルを開けて中を見てみた。
すると…
この写真ではわかりにくいが、スイッチが穴からずれた位置にあり、穴から棒を差し込んでも触れられないではないか…
なんということでしょう。
Made in Japanではまずお目にかかれないことかと…
しかし目的はスイッチをONすることなので、気を取り直してスイッチを左へ切り替える。
USBケーブルを挿すと、バッテリー充電中を表す赤色のLEDが点灯した。
ひとまず安心…
ちなみにこの赤色LEDは、箱の外側からも透けて見える。
このように透けて見えていない場合はスイッチOFFの状態なので、パネルを開けてスイッチをONする必要がある。(充電完了時には消灯する)
なお、取説には「10時間以上つないでおけ」と書かれている。
充電開始から約 1時間でLEDが消灯したが、そんなに差があるものなのか?
(2) ファームウェアのアップデート
ちなみに届いた品の起動画面を見ると以下の通り。
Bootloader: ver. 113-11205-024
FW: ver. 113-11201-211
あれっ?
ファームウェアダウンロードサイトで公開されているプログラムの方が古い?
このページで公開されている最新バージョンは以下の通り。
Bootloader: ver. 113-11201-127 [2015.11.07]
FW: ver. 113-11201-211
むむむ…
さっきの充電スイッチのこともあり、不穏な空気が私のデスクの上を漂う…
4. 使ってみる
気を取り直し、LEDを点灯するだけの簡単な回路を組んでこのオシロを使ってみる。
(1) 電源ON
回路全区間の入口と出口で挟む。
本体下側中央の P ボタンを押下する。(Pとは書いていないが取説ではそう呼んでいる)
(2) まずは校正
未調査
(3) 回路の電源OFF状態
回路全区間の入口と出口で挟む。
当然 0Vだ。
(4) 回路の電源ON状態
回路全区間の入口と出口で挟む。
3Vで安定している。
100Ωの抵抗の両端を挟む。
約1.2Vで安定している。
LED(VF=2.1V)の両端を挟む。
約1.8Vで安定している。
(5) RUN / STOP
画面右上の [Running] を押すと止まる。 Runing中に[P]ボタンでも止まる。
画面右上の [Hold] を押すと再び動き出す。 Hold中に[P]ボタンでも動き出す。
(6) Y軸のスクロール
画面の左半分をタッチしたまま上下に動かすと、Y軸がスクロールする。
画面の右半分をタッチしたまま上下に動かすと、トリガー閾値が上下に移動する。
(7) X軸のスクロール
画面をタッチしたまま左右に動かすと、X軸がスクロールする。
現在の表示範囲は、画面上端中央のバーで確認できる。
(8) Y軸のスケールを設定
縦軸の目盛り(1マス分の電圧値)を設定できる。
1) 画面左下の黄色いテキスト(電圧スケール表示)を押下する。
2) 任意の電圧値を選択し、測定対象が直流電流ならば DCを選択し Doneを押下する。
例:1Vを選択した場合、下図のように縦軸の 1目盛りが 1Vになる。
(9) X軸のスケールを設定
横軸の目盛り(1マス分の時間値)を設定できる。
1) 画面中央下の緑色のテキスト(時間スケール表示)を押下する。
2) 任意の時間値を選択し、Doneを押下する。
例:1msを選択した場合、下図のように横軸の 1目盛りが 1msになる。
(10) トリガーを設定
目的の信号を捕捉するためのトリガーを設定する。
1) 画面右下の紫色のテキスト(トリガー条件表示)を押下する。
2) 任意のトリガー条件を選択し、Doneを押下する。
※トリガーレベルの設定は、上記の「(6) Y軸のスクロール」を参照のこと。
各設定項目について補足説明を追記する。
(1) トリガーモードを設定
AUTO | 信号がトリガー条件を満たさない場合でも、定期的に波形を更新して表示する。 |
NORM : Normal | トリガー条件を満たしたときのみ波形を更新して表示する。次の信号入力があれば表示を更新する。 |
SING : Single | トリガー条件を一度だけ満たすと、その瞬間の波形をキャプチャして表示し、Holdになる。 |
(2) スロープを設定
Pos : Positive | 信号の立ち上がりエッジ検出をトリガー条件とする。 |
Neg : Negative | 信号の立ち下がりエッジ検出をトリガー条件とする。 |
(3) ポジションを設定
トリガ発生時の波形の時間軸上の表示位置を設定する。
下図の ▼ の位置(=トリガー発生時間)の位置が左右に動く。
下図は 1/2に設定した場合 → 中央に表示されている。
(4) トリガーソースを設定
トリガーの入力信号源を選択する。
INT : Internal | 測定対象のチャンネルからの入力信号をトリガーの基準とする。 |
EXT : External | 外部信号(外部トリガ端子などからの入力信号)をトリガーの基準とする。 |
(11) マーカーを使った時間幅の計測
残念だが機能が無いようだ…
(12) Hold後の再スタート
画面右上隅の Hold を押下する。
もしくは、本体下側中央の Pボタン を押下する。
(13) 電源OFF
本体下側中央の Pボタン を 長押し する。(Pとは書いていないが取説ではそう呼んでいる)
(14) その他の操作
ここまでに記載した操作方法をまとめた図が、取説に記載されている。こちら(↓)
5. 所感
・ネット上の口コミに書かれていた通りの印象を受けた。
すなわち、現時点の私の電子工作のようなライトな用途であれば、機能的に十分なのではないかと思う。
・ハンディタイプなのでちょっと気になった時に気軽に取り出して使えるのは大きい。
・画面構成はシンプルでキレイ、余計なものが無くてよい。
・動作も重たくは感じない。軽快に使えている印象だ。
・今後はテスターのようにちょくちょく使ってみようと思う。
・これで物足りなくなるような物を作れる日が来ることを願うばかり…
・「安かろう悪かろう」でないこと、すぐに壊れないことを祈るばかり…
・電圧をのぞき見したい私の欲求を満たしてくれた。値段を考えれば現時点では大満足だ。