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1. やってみたいこと
回路を組んで実験するとき、普段は単三乾電池 x 2個で電源供給している。
作業が長時間になるかな?
というときは、DC安定化電源を使っている。
乾電池は残量が減ると電圧が下がるし、新しいのを買ってきて交換するのが面倒だ。
安定化電源は大きくて場所をとるので、出したり終ったりが面倒だ。
そこで思った。
スマホ用の充電器が使えたら便利じゃないか?
作業の準備と後片付けが楽な乾電池のメリットと、
残量を気にしなくてよい安定化電源のメリットと、
スマホ充電器はその両方を併せ持つ素晴らしい電源になるのではないか!
と思った。
我が家にいくつか転がっている Androidスマホ充電器の仕様は以下の通り。
・コネクタ: micro USB
・電圧: 5V
・電流: 1.5A
ここで問題になるのは…
5Vじゃなくて 3Vがほしい
よって…
今回の目的を達成するためには、5Vの電源ラインから 3Vを取り出さなければならない。
思い立ったが吉日、早速必要なパーツを買い集めて作ってみることにした。
2. パーツを調達
いつものように秋月さんのホームページでパーツを物色する。
今回購入したのはこれ(↓)
入力した電圧を乾電池約 2個分の 3.3Vに変換出力してくれる三端子レギュレーターだ。
3Vの物もあったけど、なぜか 3.3Vが欲しくなった。
このICのデータシートに記載されている「標準回路例」は以下の通り。
発振対策用に入力側、出力側それぞれにコンデンサを入れている。
http://akizukidenshi.com/download/ta48033s.pdf
よって、以下の 2種類のコンデンサも一緒に購入する。
・セラミックコンデンサ : 0.33μF
・電解コンデンサ: 33μF
更に、電流が ICの OUT端子に逆流するのを防止するためにダイオードがあった方がよいとのことなので、これも購入しておく。
http://akizukidenshi.com/download/ds/toshiba/ta78l05s.pdf
また、スマホ用ACアダプターの出力端子が micro USBオスなので、この電源をブレッドボード上に引き込むために micro USBメスのコネクタも購入しておく。
3. やってみる
(1) スマホ充電器のUSBを回路に引き込み
まずは micro USBコネクタ(メス)キットを組み立てる。
目が悪くて気付かなかったが、この写真を見てはんだ不良がひどいのに気づきやり直した…
ブレッドボードに micro USBメスコネクタを載せる。
これだけでブレッドボード上の回路に電源を引き込めたので、早速テスター&オシロで計測してみる。
約 4.9Vの電圧がかかっている。
我が家の格安オシロで見た限りはノイズが少なく安定している。
(2) 三端子レギュレーターで 3.3Vに降圧
まずは前述の「標準回路例」を無視して三端子レギュレーターのみを繋げてみる。
※同じ 3本足の物でも製品によってピン配置が異なるので注意!
三端子レギュレーターの発振によるノイズが乗っていることを期待してオシロで計測してみると…
ICの出力端子側には、振幅が大きくて不安定な電圧がかかっている。
当然の結果だが、簡易安定化電源としては全然ダメダメだ。
(3) コンデンサでノイズを除去
上で確認されたノイズを除去するために「標準回路例」に従ってコンデンサーを入れてみる。
ノイズがきれいに除去されていることを期待してテスター&オシロで計測してみると…
素晴らしい!
スマホ充電器から入力された 5Vの電気が、キレイな 3.3Vに変換されている。
(4) 電源断時の電気の逆流を防止
更に上述の「応用回路例」に記されている保護回路を実装してみる。
三端子レギュレーターを回り込ませるように OUT端子 → IN端子方向のみ電気が流れるようにダイオードを入れる。
電源断時にこのダイオードをどれだけの電流が流れるのかを見てみる。
のつもりだったが…
うちの格安オシロでは力量不足なのか、VIN側とVOUT側の電圧の逆転を捕捉することができなかった。残念…
(5) 最終形はこちら
今回使用している TA48033 のデータシート の「標準回路例」に従い、入力側にもコンデンサーを入れた。
上記(1)のようにスマホ用 ACアダプターからの入力はきれいなので不要かもしれないが…
ブレッドボード上にはこのように配置した。
はんだ付けするジャンパー線の数を減らしたくてキツキツにしてしまった。
・実際にはトランジスタ用の青い線 1本はなくてもよい。
・オレンジ色の線は 3.3Vの出力、これを実験回路に繋ぐ。
右上の大きい方のブレッドボードが「5V → 3.3V降圧回路」、
右下の小さい方のブレッドボードが 3.3V電源で駆動する実験回路、
テスター&オシロで実験回路の電圧値を見ると、3.24V ~ 3.28V であった。この振れはなんだろう?
4. ユニバーサル基板に実装
今回の主目的は実験ではなく、スマホ充電器を利用して 3.3Vの簡易安定化電源を作ることだ。
よって、ブレッドボード上の実装ではなく、日々の実験で使いやすいように、上記の最終形回路をユニバーサル基板上に実装する。
(1) 三端子レギュレータにヒートシンクを付ける
三端子レギュレータは、電圧を下げた分を熱として放出する。
ICが高温にならないように適切な熱処理をすること。
とある。
上記の最終形回路を 30分ぐらい放置していたが、手で触れられなくなるほど熱くはなっていない。
と言うか、温度が上がっているようには全く感じられず、少なくとも自分の体温よりも低い。
でも、この降圧回路には、理屈上は三端子レギュレータの仕様範囲内(max. 16V)であれば 5Vを超える ACアダプターでも接続できるため、その可能性を残す目的もあり、ヒートシンクを付けることにする。
今回は 1個 50円のヒートシンクを放熱用シリコン接着剤で三端子レギュレータに接着する。
(2) はんだ付け
いつものようにはんだ付けの最中は写真撮影する気持ちの余裕がなく…
完成形はこうなった。
前回は旧ザクっぽかったが、今回はボトムズっぽく見える。(気がする)
ヒートシンクが装甲をまとっているようでかっこいい。(と親ばかは思う)
三端子レギュレータに取り付けたヒートシンクが巨大に見えるが、実際の大きさは 2.5cm x 1.5cmしかない。
ボード上のパーツ配置が美しくないけど、はんだ付けの楽さを優先したのでまぁ仕方がないか…
(3) 動作確認
以下の環境で動作確認した。
1) 今回製作したボードに、スマホ用充電アダプター(micro USB)を繋ぐ。
2) 今回製作したボードから、3.3Vに降圧した電気を出力する。
3) テスト用ブレッドボード上に LEDを点灯するだけの回路を実装し、2)で出力した 3.3Vを入力する。
4) このとき、ブレッドボード上の電圧をテスタ&オシロで計測する。
以下のように、安定して 3.3Vが供給され続けていることを確認した。
5. 所感
単三乾電池 x 2個の電池ボックスの電源を卒業できた!
これからは、スマホ充電アダプターから 3.3Vを取って実験回路を動かせる。
今回作成したボード(4.5cm x 3.5cm)を間に挟む必要があるが、そんなに面倒でもないと思う。
今回は出力 3.3Vの三端子レギュレータを使用したが、他にも 1.8V, 2Vなどいろいろな種類がある。
必要に応じて今回作ったボードの兄弟たちを増殖して行けばよい。
最初から 3.3Vの ACアダプターを買った方が早かった?
とも思うが、家に何個か転がっているスマホ充電アダプターを使うところが今回のミソなのだ。
今後も無駄を気にせずに作りたいと思う物を作っていきたい。