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1. どれにしようか迷う
前回の (20) トランジスタをスイッチに使う では、省電力マイコンから大きな外部電源で駆動するデバイスをコントロールするイメージで実験回路を実装してみた。
それの延長になるが…
これからしばらくの間は、マイコンからいろいろな物を制御してみようと思った。
でもマイコン制御といってもいろいろな選択肢がある。
どれにしようか?
ぱっと思いついたのは以下の選択肢だ。
[1] Arduino
[2] Raspberry Pi
[3] AKI-H8
[4] PIC
どれも I/Oポートにデバイスを繋いでマイコンから制御可能な仕組みを提供してくれている。
まず初めにどれを使おうか?
いくつか検討項目を列挙して個人的な都合で考えてみる。
(1) 今まで通りにブレッドボード上に実験回路を作りたい。
・ブレッドボード上に実験回路を組み、
・マイコンボードの I/Oピンからジャンパー線で繋ぎ、
・マイコンからソフトウェアにより制御する。
という使い方はどれを選択しても可能だ。
→ つまり差はない。
(2) マイコン制御プログラムの容易さは?
仕事で C言語や Pythonを日常的に使う自分にとってはどれも大差ない。
組込み屋をやっていた期間が長いので H8や PICは開発ツールを含めて身近な存在だ。
→ つまり差はない。
※もし私にプログラミング経験がなければ、初心者向け IDE(統合開発環境)が充実している Arduinoを迷わず選ぶ。
(3) 価格は?
1) PIC
PICは 1個 50円~数百円とダントツで安い。
PICはブレッドボード上に直接挿せるので、マザボを用意する必要がない。
でも、私はプログラム書き込みのための PICライターを持っておらず、これの購入に 5,000円ぐらいかかる。
2) Arduino
Arduino Uno Rev.3 の本体は 3,000円前後で購入できる。
ACアダプターやケーブル類を購入すれば、初期投資金額は 5,000円超か。
3) Raspberry Pi
Raspberry Pi 3 の購入には、ACアダプタやケーブル類、micro SDカードなどを合わせて 7,000円前後かかる。
Raspberry Pi Zero WH であれば性能は落ちるがセットで 5,000円ほどか。入門用途であればこちらでよいと思うが、2,000円の差であれば高性能な方が欲しくなってしまう。
4) AKI-H8
AKI-H8はそれ単体だと使いにくいので、マザボとセットで購入するか、ブレッドボード上に各端子を引き出してくる必要がある。本体、マザボ、開発ツール類のセットは 7,200円で販売されている。
どれも 10,000円を用意すれば初期の実験環境を構築できる。
→ つまりそんなに差はない。
(4) 拡張の容易さは?
近い将来、LED点灯/消灯からレベルアップしたくなった時に容易に拡張できるか?
ここで突出して目立つのが Raspberry Pi(=ラズパイ)だと思う。
他の三者と異なり、ラズパイは Linux OSを搭載して動くパソコンのように高機能な物だ。
Linuxを搭載しているということは…
・メールを送受信したり
・HTTPクライアントとして WEBから情報を取得したり
・HTTPサーバとして WEB上に情報を公開したり
・FTPクライアント/サーバとしてファイル送受信したり
・OpenCVで画像処理、映像処理したり
その他、いろいろなことがプログラムのインストール作業+αで実装できてしまう。
これを応用すれば、
・ラズパイの I/Oポートに繋げた温度センサーから得た温度値を 10分ごとにメール送信
・ラズパイの I/Oポートに繋げた温度センサーから得た温度値をリアルタイムでホームページ上に公開
・ラズパイでカメラ撮影した画像を 1分周期でインターネット上の別のコンピュータにセキュアファイル転送
・ラズパイ上の WEBサーバに外部からアクセスして CGIを起動し、I/Oポートに繋げられたモーターを回す
など、かなりの自由度でアイデアを実現できてしまいそうだ。
他の三者だと、これらを実現するためには外部のハードウェアを接続したり、ソフトウェアを開発したりと、相対的に手数が多くなる。それはそれで開発力がつくのだろうが…
で、これからいろいろと作っていくにあたり…
電子回路以外のところであんまり頭を悩ませたくない(=悩ませる余裕がない)
という私にとっては、
Raspberry Piがよいだろう!
ということに決めた。
最後まで Arduinoとどちらにしようか迷ったけど、そちらは後日やってみたい。
2. 所感
私の場合、たまたま Linuxとプログラミング言語に免疫があったのでラズパイを選択した。
もし自分が Linuxのことを全く知らなかったら?
と考えると Arduino を選んでいただろうと思う。
もし Linuxを知らずに Raspberry Piを使い始めたならば…
電子工作をやりたくて学習を始めたのに、電子工作を始める前に Linuxで躓いて
「なんだこれ難しいなぁ… や~めよ」
ってなってしまうと思うから。
その点 Arduinoは初心者向けに小難しいところ(=学習初期段階では見なくてよいところ)をラップして隠してくれていると感じた。特に ADコンバータの面倒な制御をラップしてくれているのは、学習を始めたばかりの人には無用な混乱を回避できてありがたいと思う。ペリフェラルの制御はそのうちに高機能デバイスを扱い始めたら嫌でも通る道なので、超入門段階では敢えて触れる必要はないと思う。自動車運転でも最初は MTじゃなくて ATで始めた方が挫折する人は少ないだろうと思う。
いつか気持ちと時間とお金に少し余裕が出来たら Arduinoにも触れてみよう。
連載
Raspberry Piの初期設定から簡単な動作実験まで、以下はマイコン制御入門の連載です。
(21) 【連載1-1】マイコンで電子工作入門:選定
(22) 【連載1-2】マイコンで電子工作入門:ラズパイ初期設定 ←次回
(23) 【連載1-3】マイコンで電子工作入門:LED点滅
(24) 【連載1-4】マイコンで電子工作入門:時報を作る
(26) 【連載1-5】マイコンで電子工作入門:サーボモーターを廻す
(27) 【連載1-6】マイコンで電子工作入門:合成音声で時報